このブログは、サルコイドーシス(サ症)や難病の仲間に向け書いています。

ここでは、人生後半の50歳目前で、急性サ症(レフグレン症候群)を発症。

心身ともボロボロになり、4年掛けて、どん底状態から復活しつつある、私の実体験を書いています。

難病の発症は、突然、いつでも、誰にでも 起こり得る、と言う経験をしました。

特に社会環境の変化が加速する今、そのリスクは高まっていると感じます。

難病を発症すると、体もですが、それ以上に心を痛めることが多いと思います。

難病からの立ち直り方、難病になるリスク対策について、私の一体験が何かの参考になれば幸いです。

 

初めまして、モモタ侍と申します。

2017年の春、突然 指定難病のサルコイドーシス(サ症)になりました。

サ症は、体中にできる肉芽(にくげ)と言うできものが、体の正常な機能を妨げる病気です。

症状は人それぞれですが、私の場合、痛みしびれ疲れ が辛いです。

*サ症の詳細は、難病情報センターHP→ さ行→84サルコイドーシス をご参照下さい。

サ症を発症した頃

2017年の春、私は、海外で働いていました。

仕事で大きなチャンスを得て、会社員として最も波に乗っていた矢先、突然、難病を発症しました。

健康な体を失い、その喪失感から心も痛めて帰国しました。

その後、検査入院→退院→復職しましたが、10年ぶりの日本は変わっていました。

仕事や職場環境に適応できず、1年程で病気が再増悪、心身ともにボロボロになりました。

恐らく生涯で、一番辛い体験だと思います。

 

何もかもうまく行かず、会社を辞めようと考えました。

そんな時、市の難病支援センターで、休職制度について教えてもらいました。

幸い私の会社にも休職制度があり、会社、医師と相談して休職を取る事にしました。

休職に入る前、看護師の方から「自分の為に生きて下さい(人の目や会社の為でなく)」

難病支援相談員の方から「仕事のことは、しばらく頭の中の金庫に入れて、カギを掛けて下さい

頂いたアドバイスは、今も心に残っています。

まず心と体を休める

    ストレスがサ症の病勢を左右する、と言う症例報告*があります。

    *サ症とストレスとの関与:日サ会誌2009;29:3-7

    強いストレスの前に、健康な体はモロくも崩れ去ります。 高齢になると一層です。

    私も、長引く本社の経営難が、海外の現場を混乱させ、大きなストレスが掛かった時、発症しました。

    難病で壊れた体は治らない、または治すのに何年も掛かります。

     

    私の場合、休職の判断や時期は、正しかったと思っています。

    心(=最後の砦)が折れる前に、ストレス要因から距離を置くとても大切な対処法です。

    休職後、しばらくは、サ症の強い自覚症状、痛んだ心 などにより、廃人状態でした。

    何度も、死にたいような気持ちになりました。

    しかし、何もせず、そんな状態が数カ月続いた後、少しずつ心が回復し始めました。

    ストレスと距離を置いたことで、自然の治癒力が働いたのだと思います。

     

    休職は勇気のいる決断かもしれません。

    周りに遅れを取るとか、戻った時に職場のポジションが無いのでは?とか。

    当時の私もそうでした。

    しかし、健康を失った心身は、悪い流れを更に悪くする可能性が高いです。

    また、仕事から離れてみると、世の中はもっと広く、もっと可能性に満ちていると気付きます。

    何も考えずに、心と体を休める事が大切だと思いました。

    難病を受入れる 体験談【難病と私8】 も、ご参照頂けると幸いです。。

    散歩

    休職で出来た時間で、散歩を始めました。

    30年の会社生活、ずっと同じ時間に、同じ道を歩いてきたのだと思いました。

    散歩しながら、違う時間、違う道を歩くことは、とても新鮮でした。

    少し路地に入るだけで、全く知らない世界に来た感覚になりました。

    視線を上げると、いろいろなお店の看板、知らなかった商売、人の営みに気付きます。

    長い海外生活で、世界を知った気でしたが、非常に狭い世界の中にいたのだと実感しました。

    整理整頓

    散歩をしながら、ぼーっと考え事をしてました。

    私は 、発症後の辛い原因 = 全てサ症(難病)のせい と考えていました。

    1)しかし、心が整理されるにつれ、その原因がいくつかある事に気付きました。

    • サ症による、痛みを中心とする辛い自覚症状
    • 病気の辛さを周囲に理解してもらえない孤独感。
    • 10年の間に変化した、日本の社会、仕事や生活環境に適応できない自分。

    そこで、辛い原因別に、一つずつ改善策を、探し始めました。

    2)これまでの人生を振り返ったりもしました。

    • 子供の頃から皆と同じ行動が嫌いで、学校、集団行動に馴染めなかった。
    • 入社して素晴らしい先輩、仲間に出会え、初めて集団行動が長続きした。
    • 会社の経営が悪化し、仲間が会社を去り、自分もストレス溜め、そんな時、難病になった。

    3)次のような自問自答もしました。

    • 私の好きなこと・得意なことは何か?→世界中の人とつながること。
    • 私が、苦にならず出来ることは何か?→人の悩みを聞くこと。
    • 私は、この先どんな自分でいたいか?→笑顔で、残りの人生を送りたい。

    こう言った整理により、少しずつ目の前が開け始めていくようでした。

    掃除や整理整頓は、頭や心に良い効果をもたらす、と言う記事を読みました。

    頭を整理する事で、自分の良い点・悪い点、忘れてたこと、を思い出し、本来の自分を取り戻すキッカケを掴むことが出来ました。

    「ゆっくり」生きる

    私は動物が好きですが、その中に、ナマケモノと言う興味深い動物がいます。

    動きがゆっくりで、その名の通りナマケてるように見られますが、これには、理由があります。

    ナマケモノの主食は、栄養価の低い木の葉です。

    木の葉だけで生きれるのは、そのゆっくりした動きで、エネルギー消費を節約しているからです。

    また、ゆっくりさゆえ、ナマケモノの体に苔(コケ)が付き、それが大事な栄養源になっています。

    結果、生涯を天敵の少ない木の上で過ごせます。

    これまでは、相手と競って、相手より先に行くのが美徳、と言われる時代でした。

    しかし、ナマケモノは、ゆっくりでも立派に生き、その上、地球環境にも優しいのです。

    (参考記事:National Geographic)

      生活環境を整える

      「ゆっくり生きる」と言っても、もし休職制度が無かったら。

      どうやって休む時間を作るのか?その間のお金をどうするのか? 深刻な問題です。

      これらの不安が消えない限り、ゆっくり時間を過ごせず、かえってストレスが溜まります。

      家計を見直す

      そこで休職に入って、まず家計などの 見直しをしました。

      1.社会保障の活用検討。

      傷病手当、障害者年金、障害者手帳などの社会保障は、とても生活の助けになる制度です。

      精神や内臓の疾患も対象になっているので、難病も適用される可能性はあります。

      私の場合、指定難病の「医療費受給者証」の承認を受け、医療費を軽減してもらっています。

      各々申請が必要で、ハードルが高いかもですが、ソーシャルワーカーに相談してみてはどうでしょう。

      参考書籍:医療費で損しない46の方法 著者:原 昌平 出版社:中公新書ラクレ)

      2.家計、支出の見直し。

      難病前と同じ働き方は難しくなり、以前のような収入も望めないでしょう。

      そこで、以下のように支出の見直しをしました。

      • 固定費削減:携帯、インターネットの格安プロバイダへの切り替え
      • 電子決済のポイント還元や、電子クーポンなどのフル活用
      • 野菜の栽培
      • 買おうか、どうしようか迷ったものは買わない習慣づけ。

      以前10年間、フィリピンとロシアの会社で管理責任者をしていました。

      国の経済状態・本社の経営環境が厳しい中、なんとか会社を潰さずにやり切る事ができました。

      それは、知恵を絞って、収入に合わせ、支出を減らせたから、と信じています。

      支出の見直しにより、月々のやり繰りが見えてくると、精神的にも余裕が出来ます。

      野球と同じで、家計は守りを固めれば、なんとかなるものです。

      難病を機に 家計の見直し【難病と私6】 も、ご参照頂けると幸いです。

      自分の居場所を作る

      サ症は、他の難病と同様に、外見からその症状が見えにくい病気です。

      どれだけ近い支援者にも、当事者と同じ目線で、理解を得るのは不可能に近いです。

      誰にも、わかってもらえず問題を一人で抱え込んだりします。

      そこで休職で出来た時間を使い、自分の居場所探しの為、下記の活動に参加しました。

      • 市の難病支援センターの(サ症の)仲間相談員
      • 市の難病・障害者の当事者委員
      • 在留外国人に日本語を教えるボランティア活動

      これらの活動を通し、同じ痛みや苦しみの中、前向きに生きている仲間がいる事を知りました。

      孤立状態にあった私にも、辛さや痛みを共有する場ができ、気持ちが楽になりました。

      多様な考え、生き方に触れ、世界はもっと広く、寛容で、無限のチャンスがある事に気付きました。

      これからの備えをする

      私のサ症は、少しずつ悪化していきました。

      その後、昨年夏、ステロイド治療に踏み切った結果、体調が安定しました。

      気力も戻り、また働きたいとも思えるようになりました。

      しかし、復職し同じ失敗を繰り返す可能性も高く、セカンドライフの準備をしています。

      • これまでのキャリアを生かして外国とつながる仕事をする。
      • その為に、そして新たな肩書を作る意味でも、行政書士の資格を取得中です。
      • 現状、通勤は厳しいかもしれない。
      • なので、在宅ワークに役立てばと、ウェブデザインやライティングの勉強をしています。

      職場復帰、再就職は厳しいかも?新たな挑戦、楽しみを持って生きてゆきたいと思います。

      最後に

      この歳になって初めて、生きることは困難や失敗の連続であり、それが普通と感じます。

      そこから多くを学び、成長し、生きている喜びと感謝を、サ症を通じて知りました。

      最近、テレビ等で大活躍していた人が、少しの失敗で、突然、画面から姿を消すのをよく見ます。

      失敗や困難から立直ろうとしている人に、誰かが手を差し伸べる。

      そんな懐の深い社会であって欲しい。 また、私もその為に何かの役に立ちたいと思います。

       

      最後まで読んで頂きありがとうございました。